日本古来よりの在来工法で建てられた家は、自由に増改築しやすく、押入れや壁を取り払って間取りを変えたり、壁面に新しく窓を設けることや、天井板を取り払って、高く奥行きのある空間もつくることが可能です。築30年から40年以上の家の多くは、たとえ簡素な家でも木組みの伝統工法が施されていることが多いです。職人の技で組まれた柱や梁は、見せ方ひとつで家の雰囲気や格調が違って見えてきます。傷んだ家と諦めずに、古い家だからこその良さをデザインの中で引き出していくことは、民家再生の豊かさにつながっていきます。
古い家に住まうにあたって最も心配されるのは、雨漏りやすきま風、シャワーのないお風呂など、生活面での不便さではないでしょうか。その点は妥協することなく、使い勝手の良さを選択されることをお勧めしています。特にキッチンやバストイレなどの水回りは、機能的な設備で必要十分な環境を整えることが可能です。また既存の銀色のアルミサッシなど和の空間にそぐわないアイテムも、防犯や気密性においては有効です。敷居や鴨居を二重にして内側に障子をはめるなど、新旧の良いところをうまく取り入れる手立てはいろいろとございます。古き良き和のテイストと便利な生活、どちらも手放すことなく〈民家〉の暮らしを愉しんでいただけたらと考えています。